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補助者の山口です。
指定受取人と被保険者の同時死亡
保険金の受取人について最高裁の判例が出ました。

被保険者が死亡した時点で、
指定受取人がすでに死亡している場合、
受取人は指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者となります。

民法では死亡の先後が定かでない場合は同時に死亡したものと推定されます。
指定受取人妻Cと被保険者夫Aが同時死亡した場合は
夫婦間の相続は起こりませんので、上記の例では相続人はFのみとなり、
保険金の受取人は妻側の親族のFだけとなります。

しかし、それは保険契約者の意思に反するとして、
妻が先に死亡したものとみなして、夫の相続人も順次の法定相続人として
保険金の受取人とすべきだという考え方がありました。

このたびの判例では
指定受取人を先に死亡したとみなす根拠がないということで、
原則どおり、夫婦間の相続がないものとして
妻の相続人だけが受取人とされると判断されました。

上記の図でいうと
夫Aの兄Eは受取人とならず、妻Cの弟Fだけが受取人となります。

「妻側だけが受け取るのは夫の意思に反する」という主張は退けられました。

法律的には妥当な判断だと思われます。

最高裁判例 平成21年6月2日

主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高橋孝志の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,昭和62年8月12日,Bとの間で,被保険者をA,保険金受取人を同人の妻であるCとして生命保険契約(以下「本件契約」という。)を締結した。Dは,Bの保険契約を包括的に承継し,その後,上告人がDの保険契約を包括的に承継した。
(2) 平成13年7月20日,AとCの両名が,一方が他方の死亡後になお生存していたことが明らかではない状況で死亡した。AとCとの間には子はなく,Aの両親及びCの両親は,いずれも既に死亡していた。Aには弟であるE以外に兄弟姉妹はおらず,Cには兄である被上告人以外に兄弟姉妹はいない。
2 本件は,上記事実関係の下において,Cの兄である被上告人が,商法676条2項の規定により保険金受取人になったと主張して,保険会社である上告人に対し,保険金等の支払を求めた事案である。所論は,保険契約者兼被保険者と保険契約者によって保険金受取人と指定された者(以下「指定受取人」という。)とが同時に死亡した場合には,商法676条2項の規定により保険金受取人を確定すべきであるが,同項の規定を適用するに当たっては,指定受取人が保険契約者兼被保険者よりも先に死亡したものと扱うべきであるから,本件においては,Cの相続人である被上告人とCの順次の相続人であるEの両名が保険金受取人となるはずであるのに,被上告人のみを保険金受取人とした原審の判断には法令解釈の誤りがあるというのである。
3 商法676条2項の規定は,保険契約者と指定受取人とが同時に死亡した場合にも類推適用されるべきものであるところ,同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは,指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいい(最高裁平成2年(オ)第1100号同5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4740頁),ここでいう法定相続人は民法の規定に従って確定されるべきものであって,指定受取人の死亡の時点で生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない(民法882条)。したが
って,指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において,その者又はその相続人は,同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」には当たらないと解すべきである。そして,指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者との死亡の先後が明らかでない場合に,その者が保険契約者兼被保険者であったとしても,民法32条の2の規定の適用を排除して,指定受取人がその者より先に死亡したものとみなすべき理由はない。
そうすると,前記事実関係によれば,民法32条の2の規定により,保険契約者兼被保険者であるAと指定受取人であるCは同時に死亡したものと推定され,AはCの法定相続人にはならないから,Aの相続人であるEが保険金受取人となることはなく,本件契約における保険金受取人は,商法676条2項の規定により,Cの兄である被上告人のみとなる。
これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤田宙靖 裁判官堀籠幸男 裁判官那須弘平 裁判官田原睦夫 裁判官近藤崇晴)
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