指定受取人が被保険者より先に死亡した場合
記事投稿日時:2009年06月26日金曜日
投稿者:司法書士 山口達夫事務所 カテゴリー: 相続
アクセスありがとうございます。
補助者の山口です。
古い判例ですが相続と保険金の話です。
被保険者が夫Bで、保険金の受取人を子供Cと定めていた場合に
Cが先に亡くなってしまい、受取人を変更する前にBも亡くなってしまった場合、
受取人はだれになるか?
※夫Bの両親は亡くなっていて兄弟DEFGがいる。
奥さんAが全額貰ってもいいように思えますが、
ADEFGで等しい割合で受け取ります。
指定受取人が死亡した場合は「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」が受け取ります。そこで相続人が保険金発生までに死んだ時に問題となります。
今回の問題では AとBが相続人なのは間違いありませんが、Bは保険金を受け取る段階で死んでいます。Bは死亡しているので受取人とはなれません。Bが受け取れない以上、Bの相続人が受け取るのか、Aだけが受け取るのかが問題となります。
その点判例は「保険金を受けるべきものの相続人」は
指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者としました。
指定受取人Cの法定相続人は前述のとおりAとB
Bが死亡しているので順次の法定相続人がADEFGです。
よって、保険金を受け取るのはADEFGです。
Aは2重の立場で受取人となります。
そこで次に問題となるのが受け取る割合です。
相続だとするとAはかなりたくさんもらえる立場です。
判例はどのように判断したのでしょうか?
判例は受け取る割合は
民法四二七条の規定の適用により、平等の割合、と判断しました。
※民法427条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
この問題はだれが保険金を受け取るかの問題であって、
保険金の相続の問題ではないので、
Aがたくさんもらえなくても仕方がないようです。
指定受取人が亡くなった場合は、
なるべく早く受取人の変更手続きをしたほうがよいでしょう。
この問題の判例はつづきにあります。
平成5年09月07日 最高裁判所判決
一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者(以下「指定受取人」という。)の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいうと解すべきである(大審院大正一〇年(オ)第八九八号同一一年二月七日判決・民集一巻一号一九頁)。けだし、商法六七六条二項の規定は、保険金受取人が不存在となる事態をできる限り避けるため、保険金受取人についての指定を補充するものであり、指定受取人が死亡した場合において、その後保険契約者が死亡して同条一項の規定による保険金受取人についての再指定をする余地がなくなったときは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者が保険金受取人として確定する趣旨のものと解すべきであるからである。この理は、指定受取人の法定相続人が複数存在し、保険契約者兼被保険者が右法定相続人の一人である場合においても同様である。
二 そして、商法六七六条二項の規定の適用の結果、指定受取人の法定相続人とその順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になるものと解すべきである。けだし、商法六七六条二項の規定は、指定受取人の地位の相続による承継を定めるものでも、また、複数の保険金受取人がある場合に各人の取得する保険金
請求権の割合を定めるものでもなく、指定受取人の法定相続人という地位に着目して保険金受取人となるべき者を定めるものであって、保険金支理由の発生により原始的に保険金請求権を取得する複数の保険金受取人の間の権利の割合を決定するのは、民法四二七条の規定であるからである。
三 そうすると、Aが被上告人との間で、昭和六一年五月一日、被保険者をA、保険金受取人をAの母であるB、死亡保険金額を二〇〇〇万円とする生命保険契約を締結したが、Bが同六二年五月九日に死亡し、次いでAが同六三年一一月一三日に保険金受取人の再指定をすることなく死亡し、Bの法定相続人としてA及び上告人らの四名がおり、Aの法定相続人として上告人ら以外に一一名の異母兄姉等がいるとの原審が適法に確定した事実関係の下においては、上告人ら及びAの一一名の異母兄姉等の合計一四名が保険金受取人となったものというべきであるから、右死亡保険金額の各一四分の一について上告人らの請求を認容し、その余を棄却すべきものとした原審の判断は正当として是認することができる。前記大審院判例は、所論の趣旨を判示したものとはいえない。論旨は、採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
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補助者の山口です。
古い判例ですが相続と保険金の話です。
被保険者が夫Bで、保険金の受取人を子供Cと定めていた場合に
Cが先に亡くなってしまい、受取人を変更する前にBも亡くなってしまった場合、
受取人はだれになるか?
※夫Bの両親は亡くなっていて兄弟DEFGがいる。
奥さんAが全額貰ってもいいように思えますが、
ADEFGで等しい割合で受け取ります。
指定受取人が死亡した場合は「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」が受け取ります。そこで相続人が保険金発生までに死んだ時に問題となります。
今回の問題では AとBが相続人なのは間違いありませんが、Bは保険金を受け取る段階で死んでいます。Bは死亡しているので受取人とはなれません。Bが受け取れない以上、Bの相続人が受け取るのか、Aだけが受け取るのかが問題となります。
その点判例は「保険金を受けるべきものの相続人」は
指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者としました。
指定受取人Cの法定相続人は前述のとおりAとB
Bが死亡しているので順次の法定相続人がADEFGです。
よって、保険金を受け取るのはADEFGです。
Aは2重の立場で受取人となります。
そこで次に問題となるのが受け取る割合です。
相続だとするとAはかなりたくさんもらえる立場です。
判例はどのように判断したのでしょうか?
判例は受け取る割合は
民法四二七条の規定の適用により、平等の割合、と判断しました。
※民法427条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
この問題はだれが保険金を受け取るかの問題であって、
保険金の相続の問題ではないので、
Aがたくさんもらえなくても仕方がないようです。
指定受取人が亡くなった場合は、
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補助者山口
東京都立川市 司法書士山口達夫事務所
http://shihoshoshi-yamaguchi.com/
Email:info@shihoshoshi-yamaguchi.com
TEL:042-521-0888 FAX:042-595-8602
→→→お問い合わせフォームを使う
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この問題の判例はつづきにあります。
平成5年09月07日 最高裁判所判決
一 商法六七六条二項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、保険契約者によって保険金受取人として指定された者(以下「指定受取人」という。)の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいうと解すべきである(大審院大正一〇年(オ)第八九八号同一一年二月七日判決・民集一巻一号一九頁)。けだし、商法六七六条二項の規定は、保険金受取人が不存在となる事態をできる限り避けるため、保険金受取人についての指定を補充するものであり、指定受取人が死亡した場合において、その後保険契約者が死亡して同条一項の規定による保険金受取人についての再指定をする余地がなくなったときは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者が保険金受取人として確定する趣旨のものと解すべきであるからである。この理は、指定受取人の法定相続人が複数存在し、保険契約者兼被保険者が右法定相続人の一人である場合においても同様である。
二 そして、商法六七六条二項の規定の適用の結果、指定受取人の法定相続人とその順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法四二七条の規定の適用により、平等の割合になるものと解すべきである。けだし、商法六七六条二項の規定は、指定受取人の地位の相続による承継を定めるものでも、また、複数の保険金受取人がある場合に各人の取得する保険金
請求権の割合を定めるものでもなく、指定受取人の法定相続人という地位に着目して保険金受取人となるべき者を定めるものであって、保険金支理由の発生により原始的に保険金請求権を取得する複数の保険金受取人の間の権利の割合を決定するのは、民法四二七条の規定であるからである。
三 そうすると、Aが被上告人との間で、昭和六一年五月一日、被保険者をA、保険金受取人をAの母であるB、死亡保険金額を二〇〇〇万円とする生命保険契約を締結したが、Bが同六二年五月九日に死亡し、次いでAが同六三年一一月一三日に保険金受取人の再指定をすることなく死亡し、Bの法定相続人としてA及び上告人らの四名がおり、Aの法定相続人として上告人ら以外に一一名の異母兄姉等がいるとの原審が適法に確定した事実関係の下においては、上告人ら及びAの一一名の異母兄姉等の合計一四名が保険金受取人となったものというべきであるから、右死亡保険金額の各一四分の一について上告人らの請求を認容し、その余を棄却すべきものとした原審の判断は正当として是認することができる。前記大審院判例は、所論の趣旨を判示したものとはいえない。論旨は、採用することができない。 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
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Posted by: t2yamaguchi