最判昭和38年12月24日の解釈の問題です。

アクセスありがとうございます。
補助者をやっております。山口です。

過払い請求訴訟で現在争点となっているのは
札幌高判平成21年4月10日の判決に関して、
つまり利息発生日についてだと思います。

ただ以前は訴訟の引き延ばしのために
「みなし弁済ができることを信じていたので悪意受益者ではない。」
という主張がよくなされていたと思います。
悪意受益者ではないから利息の返還義務はないということでしょう。

しかし、善意受益者ならば本当に利息の返還義務はないのでしょうか?

民法704条は、善意受益者に「現存利益」の範囲内で返還義務があることを示してます。

この現存利益は支払の上限を定めただけです。
支払うべき金額は条文から明らかではありません。

つまり、不当利得とそれによる運用利益があり、それが現存している場合に
不当利得した金銭のみ返還すればいいのか、
不当利得した金銭に法定利息を加えて返還するのか、定かではありません。

この範囲が悪意の受益者と同様であれば、
両者の違いは利益が現存するかだけであり、
貸金業者は「悪意受益者ではないから利息の返還義務はない」とは言えなくなります。

では 判例はどのようになっているでしょうか?

最判昭和38年12月24日 (pdf)
「社会観念上受益者の行為の介入がなくても不当利得された財産から損失者が当然取得したであろうと考えられる範囲においては、損失者の損失があるものと解すべきであり、したがつて、それが現存するかぎり同条にいう「利益ノ存スル限度」に含まれるものであつて、その返還を要するものと解するのが相当である。」

この表現だけでは「社会通念上当然」の意味がよくわからないです。

この点、「社会通念上当然取得したであろうと考えられる範囲」の解釈は下級審で分かれています。


平成19年04月12日 京都地方裁判所 pdf
「受益者の行為の介入がなくても不当利得された財産から損失者が当然取得
したであろうと考えられる範囲」とは,社会観念上,定期預金金利をもって
観念されるところ,近年の金利動向に照らせば,上記範囲が民法所定の法定
利息に到底及ばないことは明らかである

平成18年08月31日 大阪高等裁判所 pdf
一般市民が損失者であっても,
民法703条に基づき,利得金に民法所定の年5分の利率で計算された利息
相当額を付して,返還させなければならないという帰結になる。

平成14年01月24日 佐賀地方裁判所 (商人間) pdf
この最高裁判決の理論を推及するなら,被告丙は,原告に対し,過払金に年
6分の利息相当金を付した金額を請求できる権利があると解される。

京都地裁は社会通念に重きを置き、
ほかは法律の整合性に重きを置いた形でしょうか?

金銭債権に対して損害賠償で法定利率が年5分であることとの整合性、
逸失利益の計算において年5分が使われていることとの整合性。
そういったことをかんがえると
やはり、現実の定期預金金利はどうあれ、法定利息が妥当かなと個人的に思います。

クレサラ問題では悪意の受益の立証が容易なので、
主張する機会はあまりないと思いますが、
すこし気になったので、備忘録として書き留めておきました。

司法書士山口達夫事務所 補助者山口
http://shihoshoshi-yamaguchi.com/

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