2015年 3月の記事一覧
不動産の名義変更(登記)をするには登録免許税という税金を
国に納める必要があります。
納税方法は「登記申請書」に収入印紙を貼って納めます。
司法書士に依頼する場合は司法書士に報酬分と税金分を合わせて支払い、
司法書士が収入印紙を購入して申請書に貼り付けるのが一般的です。
例として次に相続登記(名義変更)の登録免許税の計算例を記載します。
土地建物の全部(所有権)を相続によって移転する場合です。
土地建物の移転についての登録免許税の計算は
固定資産評価証明書の評価額が基準になります。
相続登記の登録免許税の税率は4/1000です。
土地建物の評価額の合計が仮に20,000,000円とすると
20,000,000円×4/1000=80000円です。
次は土地建物の共有持分2分の1を相続によって移転する場合です。
土地建物の評価額の合計が仮に20,000,000円とすると
持分半分(2分の1)の移転は
20,000,000円×1/2×4/1000=40000円です。
細かい点ですが、税率を掛ける前に1000円未満の端数を切り捨て、
税率を掛けた後に100円未満の端数を切り捨てるというルールもあります。
一般の方からよくご依頼をいただく抵当権抹消登記ですが、
案件によっては抹消登記だけでなく、その前に別の登記を
申請する必要があります。下記3つが代表的な場合です。
①所有者の登記簿上の住所が現在の住所と違う場合
土地建物を購入(登記)をした当時から住所を移転している場合、
登記簿上の住所と現在の住所が異なります。この登記簿の住所を
現在の住所に変更する「所有権登記名義人住所変更登記」を抹消登記
の前に申請する必要があります。
補足ですが、抹消する抵当権者の本店が登記簿上の本店と違う場合は
変更が分かる証明書を添付すれば足り、変更登記は必要ありません。
②抵当権が消滅する前に合併等により移転している場合
抵当権が合併等により移転した後に抵当権が消滅した場合は、
「抵当権移転登記」を抹消登記の前に申請する必要があります。
(権利変動の過程を分かるようにするためです。)
なお司法書士に依頼する場合、抵当権移転分の費用は通常移転をした
金融機関等に請求します。抹消登記の費用のみ依頼人からいただくことになります。
③所有権が死亡した後に抵当権が消滅した場合
土地建物の所有者が死亡した後に抵当権が消滅した場合は
所有者の相続による土地建物の名義変更(移転登記)、つまり「相続登記」を
抹消登記の前に申請する必要があります。
なお所有者の死亡前に抵当権が消滅している場合は、相続登記をすることなく
そのまま抹消登記が可能です。(ただ相続を証する書面は必要です。)
上記は抹消登記の前に申請する必要がありますが、連件申請といって
申請書に番号を振れば(1/2、2/2など)合わせて法務局に持ち込むことが
可能です。別々に分けて申請する必要はありません。
過去に依頼を受けた事例です。
土地を複数人で共有で所有しているが、権利関係が複雑なので
いまのうちに一人の単独所有にしたい。
そこで各自の持分を単独所有する人に「贈与」しようと考えた。
ただ土地が「農地」なので移転には農地法の許可が必要になると
思ったが、役所に相談したら許可は難しいと言われた。
上記のような相談内容です。
そこで依頼の目的が共有関係の解消(単独所有)でしたので、
各自の持分を「贈与」(一方があげる・相手方は受け取る)でなく、
その持分を「放棄」(自分はいらない)してもらいました。
「贈与」の場合は農地法の許可が必要ですが、「持分放棄」の場合は不要です。
農地法の許可がもとめられるのが当事者の意思表示による移転です。
「持分放棄」は単に自分の持分をいらないという意思表示で移転についての
意思表示ではないからです。
ではなぜ移転するかというと「共有者の一人が持分を放棄したときは、その持分は
他の共有者に帰属する」という規定が民法という法律にあり、これによって移転を
するためです。つまり法律上の効果によって自動的に移転をするので、意思表示に
よる移転ではない。したがって農地法の許可は不要という理屈です。
注意点ですが、他の共有者にその持分割合に応じて帰属します。
例えばA・B・Cが3名で共有している土地でAが「持分放棄」した事例ですが、
Aの持分をBだけに移転することはできません。Cにも持分が帰属する
からです。また共有者ではないDにも当然移転はできません。
BだけまたはCだけあるいは共有者ではないDへ移転が目的の場合は
「贈与」等の他の方法で移転をすることになります。
※移転原因が「持分放棄」でも贈与税の対象にはなりますのでご注意下さい。
抵当権抹消は抵当権者(義務者)と物件の所有者(権利者)の
共同申請になります。
では物件の所有者が2名以上(共有)の場合、例えば
土地 Aさん・Bさん 建物 Aさん・Bさん
土地建物に抵当権が設定されてます。
上記のような共有関係の場合Aさん・Bさんともに
抵当権の抹消の申請人になる必要があるのか。
共有物の保存行為は共有者の1人が単独でできます。
ですからこの場合はAさんまたはBさんのどちらかが申請人
となれば抹消登記を申請できます。
つまり司法書士が依頼を受ける場合は片方から委任状をいた
だけば足りることになります。
ただし登記の申請書には権利者として両方の記載が必要です。
土地 Aさん・Bさん 建物 Aさん・Cさん
この場合もAさんのみが申請人となることは可能です。
土地 Aさん単独 建物 Bさん単独
この場合はAさん・Bさん両方が申請人になる必要があります。
完了書類をお渡しする際によく
「もう前の権利証は処分して大丈夫ですか?と
質問を受けます。
所有権全部を移転して効力が無くなっている場合
(カラの権利証)は問題ありませんが持分を移転
した場合は注意が必要です。
例えば土地登記簿上、Aさんの持分が2分の1、Bさんの持分が2分の1
とします。(過去に土地を購入した際共有名義で登記)
今回Aさんが亡くなり、持分2分の1をBさんに「相続」で移転登記をしました。
その結果その土地はBさんの単独名義となります。
ただ、今回移転したのは2分の1なので、発行される新しい権利証
(登記識別情報)は移転した2分の1の効力しかありません。
もともと購入した際の権利証のBさんの持分は動かしてないのでまだ
効力が残っています。つまり今回の新しい権利証(2分の1)ともともと
の権利証(2分の1)合わせて土地全体の権利証になるということです。
上記のようなケースの場合は古い権利証を絶対に処分してはいけないので、
完了書類をお渡しする際に念入れにご説明してます。