今回の話は去年の12月28日に落札した掛け軸の話です。オークションに仏画が出ていましてね。絵がうまいのです。当然いいものですので、欲しくなりました。掛け軸に由来書があり絵の裏に表装されていました。仏画には落款等を入れない人もあり、この仏画にも何も書かれていませんでした。絵がうまいものですので、誰が書いたか気になる処ですよね。ところがオークションに出しているお店の人がこの由来書を読めないのです。書かれたのは大正3年ですからね、だからこの題名が「珍しい仏画観音像絹本肉筆掛軸」ですよ。この店の名は「五体投地」と言う店で大分の骨董屋さんです。ここは結構本物の掛軸が出ていまして、そんなに悪い店でもないと思いました。贋作ばかりじゃ困りますけどね。だからこれもいいものだと思いましたね。とにかくこの由来書を読み解かなくてはダメですよ。ざっと読むと漢文ですよね。下に読んだり又上に戻ったりですよ。とにかく一字一字読んでいくことにしました。読んでいくと、画伯と言う字が読めましてね、その下の字がすぐに読めましたよ。この字は何と長年渥美町で仕事をしてきた司法書士でないと読めない字ですよ。つまりこの氏は渥美町に多い氏なんです。荒木と読みますね。この荒木が素人では読めないのです。昔権利書にこの古い荒木の「荒」字がありまして、これを荒木と読むのがすぐに分かりました。この字は今では全く使いませんので一般の方は分からないと思います。次の木の字もカタカナのネの様に書かれていまして、荒木とは読めませんね。あとは名前の二文字ですよ。黄畝と書かれていました。荒木黄畝ですか?こんな人はいませんよ。いるとしたら荒木寛畝ですよ。私も一字一字じっくりと見ました。そして発見しました。黄の上にうかんむりがあるんですよ。細い線が一本真横にうっすらと乗っかっているのです。よく見ないと分かりませんよ。これでつながりました。黄は寛ですよ。そして荒木寛畝画伯となりました。この様な有名な画伯の仏画はなかなかありませんからね。勿論そんなに高くはありませんが私が落としました。

 明治天皇の頃、元老院の命で明治天皇、昭憲皇太后、英照皇太后(明治天皇の実母ではない)の御影を描く大任を任された。写真では気に入らなくて英照皇太后だけは本人を前にして描いたそうです。英照皇太后御肖像(御物)以上なこともありまして、仏画を落札しました。仏画は小ぶりですが、細密に描かれております。波上観音像で雲間に月が出ています。後光が放射線状に金泥で描かれています。細い軸ですが当時は高額だったと思います。落款が無いものですから、京都の美術商の懐古堂の主人が大正3年に由来書を書いたのだと思います。荒木寛畝は孔雀の図でも御物になっています。明治天皇がらみと言うことで、天皇陛下の司法書士としました。

 

 

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