今回は、ちょっとややこしい内容について書いてみたいと思います。

退職金は、民事執行法152条第2項により、4分の3の範囲において差押禁止です。したがって、退職金は、その金額の4分の3は、破産手続き上換価されないということになります。さらに、大多数の裁判所では、会社が倒産する可能性なども考慮して、残り4分の1の退職金のさらに2分の1、8分の1の金額で評価しています。そして、破産手続きにおいて、8分の7の範囲は換価されないという取り扱いをされています。

このことに関連して、個人年金や生命保険の解約返戻金請求権が差押禁止債権となるのかどうか、退職金と同様、破産手続きにおいても一部換価されない扱いがされるのかということについて、少し調べる機会がありましたので、書いておきます。

生命保険の解約返戻金に関しては、最高裁平成11年9月9日判決で、差押が出来るかどうかという点について判断されています。結論は、「生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができる」ということでした。つまり、保険の返戻金を差し押さえた債権者は、強制的に保険を解約し、返戻金を取り立てることができるということになります。
※ただし、「民事執行法153条により差押命令が取り消され、あるいは解約権の行使が権利の濫用となる場合」はありうるとしています。

では、個人年金の解約返戻金についてはどうかといいますと、こちらは、大阪高裁平成13年6月22日決定で、やはり差押債権者は解約権を行使して、返戻金の取り立てができるという結論となっています。こちらは、奈良地裁平成13年5月30日決定で、個人年金の解約権は契約者の一身専属権であるとして差押申立てを却下する決定がされていたのを、取消したものです。

以上より、多額の解約返戻金のある生命保険や個人年金については、解約返戻金は差押禁止債権ではなく、したがって全額換価される財産であるということになると思われます。
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