今日は、私がはじめて自己破産の申立書の作成をしたときのお話です。

平成13年のことだったと思いますが、まだ司法書士が現在のように積極的に債務整理関連の業務を行っていなかった時代のことです(司法書士に簡裁代理権が付与されたのは、平成15年4月1日)。

当時でも、司法書士は「裁判所に作成する書類の作成代理」は業務範囲となっていましたので、法律上は破産申立書の作成も可能でした。しかし、まだ司法書士といえば登記という認識が強く、私も日常の業務は登記一色で、債務整理や自己破産に関与することはまったくありませんでした。

私も、大阪の事務所で司法書士の見習いをやっていたのですが、主要業務は不動産登記と商業登記で、裁判所に提出する書類の作成は全くやったことがありませんでした。そんな中、事務所に多重債務に悩む女性が相談にこられました。アルバイトで生計を立てておられましたが、生活費がどうしても足りなくなり、消費者金融で借入をするうちに、利息が増えて返済がしていけなくなったということです。

生活もぎりぎりの状態ですので、急いで自己破産の申し立てをする、ということになりました。友人と2人で担当することになりましたが、2人とも初めての経験です。

まずは面談して、事情をお聞きしました。こちらも上手に聞き取りができず、依頼者の方も緊張されていて、なかなか要点がお聞きできません。

結局、書類をそろえてもらったり、事情の聞き取りをしたりで5、6回はご来所いただいたと思います。緊張しながら裁判所に行き、裁判所書記官の方に怒られながら(書類に不備が多いため)、なんとか書類の不備を追完し、破産申立ができました。

そして、免責の決定も出て、一安心となりました。依頼者の方もとても安心したようで、表情が見違えるように明るくなり、こちらも嬉しくなりました。

破産申立を終えて、一番感じたのは、登記よりも依頼者との距離が非常に近いということです。依頼者からすれば、過去の自分のいやな経験、恥ずかしい経験も話さなければならず、こちらも聞きにくいことを聞かなければいけません。登記業務では、そのようなことはほとんどありません。

そして、距離が近い分、依頼者が喜んでもらえると、自分もその分嬉しくなります。大変だけど、やりがいはある仕事だと思いました。現在、債務整理を中心業務として司法書士をやっているのも、この経験が心に残っていたためだと思います。

ちょっと初心に戻って、はじめての自己破産申立について振り返ってみました。