2014年 12月の記事一覧
今回は、自己破産手続きにおける非免責債権について書いてみたいと思います。
まず、非免責債権とは、自己破産しても免除されない債権のことをいいます。たとえば「破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求債権」などは、自己破産されても免除されない非免責債権です。
しかし、裁判所は、破産手続に際して、ある債権が非免責債権かどうかという判断はしません。破産・免責申立全体について免責または免責不許可決定はしますが、個別の債権について免責か非免責かという判断はしないのです。
上記の「破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求債権」の例で言えば、不法行為の被害者からすると、加害者は悪意であったために損害賠償債権は非免責債権であるとしても、加害者からすると単なる過失による損害賠償債権であるというケースもあるでしょう。このような場合に、破産申立をされた裁判所が、この加害者に悪意があったかどうかを判断することはありません。破産後に被害者が損害賠償請求訴訟を提起した際に、その裁判の中で判断されることとなります。
そして今回気になって調べたのが、保育料です。公立保育園の保育料が非免責債権に該当するか否かという点です。結論からいいますと、非免責債権ということになりそうです。破産法破産法253条1項1号いうところの「租税等の請求権」に該当するということです。
この「租税等の請求権」とは、破産法97条1項4号に「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」と規定されており、この「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」に当たれば非免責債権となり、当たらなければ免責債権となるということになります。そして、保育料は児童福祉法56条10項に基づいて滞納処分の例により徴収できることが定められているので、「租税等の請求権」に該当することとなり、非免責債権となります。
以前、自己破産と個人年金の解約返戻金の関係について書きましたが、今回は、自己破産と確定拠出年金について書いてみたいと思います。
確定拠出年金というのは、個人型と企業型があります。個人型は個人が掛け金を支払います。自営業者等が加盟するもので、我々司法書士が加入することのできる国民年金基金なども個人型の確定拠出年金の一種です。企業型は、企業が掛け金を支払います。一部上場企業にはかなり導入されており、徐々に普及してきているようです。
以前に司法書士会の研修で「確定拠出年金は自己破産手続きにおいて通常の退職金よりも有利に扱われる」と聞いたことがあったのですが、今回まさに確定拠出年金制度のある会社に勤務されている方の自己破産に関与することがあったため、詳しく調べてみました。
するとやはり、確定拠出年金は自己破産手続きにおいて、通常の退職金とは異なり、財産とはみなされません。通常の退職金は、その8分の1に相当する額の財産として評価されます。8分の1で評価する理由は、その4分の1が法律上差し押さえ禁止であることと、会社の倒産や懲戒解雇などの場合も考慮したものです。これに対して、確定拠出年金は、確定拠出年金法第32条で、国税滞納処分等により差し押さえる場合を除き差し押さえができないと規定されています。したがって、全額が差し押さえ禁止である以上、全額が自己破産手続きにおいて換価の対象となる財産とすることができず、財産とはみなされないということになるのです。
しかし、確定拠出年金は従来企業が掛け金を払っていましたが、平成24年から「マッチング拠出」と言いまして、従業員による掛け金の負担も認められるようになりました。そして、従業員が掛け金を負担するということは、給料から掛け金が天引きされていくわけですから、自己破産の場合にこれが財産とみなされないという結論に、なんとなく違和感を感じます。しかし、マッチング拠出も結局その根拠となる法律は確定拠出年金法ですから、差し押さえ禁止であることに違いはないのでしょう。するとやはり、財産とはみなされないということになると思われます。