前回は相続の開始があったことを知ったときとはいつを指すものかを説明しました。

今回は相続放棄の続きです。

さて単純承認は相続の開始があったことを知ったときから3か月経過しても放棄や限定承認の意思表示をしなければ単純承認をしたものとみなされることは以前説明しましたが、その外にも相続人がこの熟慮期間中にある行為を行えば単純承認したものとみなされる場合があります。どのような場合でしょうか?

まず相続人が選択権行使前に相続財産の全部または一部を処分したときには単純承認したとみなされます。つまり相続財産を処分したということは相続財産を承継する意思があるから処分できたとみなされるわけです。但し保存行為や民602で定める短期の賃貸借は処分には当たりません。また相続財産である不動産賃貸物件の賃料を受領する行為も保存行為ですので処分には当たりません。

次に相続人が選択権行使後(放棄や限定承認の意思表示)に相続財産の全部または一部を隠匿し私にこれを消費し又は悪意(ワザとの意)でこれを財産目録中に記載しなかったとき但しその相続人の放棄により相続人となった者が承認した後は適用されないとされています。

但し書き以下は別途また説明しますがこの規定はどういう意味でしょうか?

まず「私に」とは債権者を害することを知りながらという意味であり「消費」には処分の意味も含まれます。「財産目録」とは限定承認の場合に調製が必要となるものです。

ではこのような場合も単純承認とされてしまうのでしょうか?

甲は父親乙多額の借金を抱えたまま失踪してしまいその3か月後に誰も使用しない父名義の車を売却したとします。ところが後日父乙は失踪直後死亡していたことが判明しました。甲はその事実を知らずに車を処分してしまったのですが上記規定により単純承認してしまったとして父の借金を相続しなければならないのでしょうか?

次回説明します。

ここまで読んでいただきありがとうございます。



藤原司法書士事務所

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